会長挨拶

前田博仁

 この度、これまで長年にわたり、本民俗学会の発展にご尽力いただいた原田前会長のご推薦により、宮崎民俗学会会長を拝命しました前田博仁と申します。会長という重責、不慣れですのでご指導どうぞよろしくお願い申し上げます。
 ところで、平成も三十年で終わることから、昨年末マスコミは三十年を振り返る特集記事や特別番組を組んでいましたが、平成の三十年間は私にとっても充実した時代でした。
 昭和三十九年に発足した「日向民俗学会」が発展解消して、平成五年に「宮崎県民俗学会」(平成二十七年宮崎民俗学会に改称)として再出発しました。会長に山口保明元会長が就任され事務局長に前田が推薦されました。
 事務局の仕事は学会活動全般にわたり、例えば総会開催時期やその時の講演や発表の予定者の選定、秋季研究発表大会の候補地や巡見、発表者選出、予定地の史談会との懇親などを企画して役員会に提案、総会で承認という仕事がありました。
 私は県総合博物館から平成二年には県教育庁文化課へ配置換え、小学校教頭を経て県立図書館の古文書にかかわる部署へ、最後は宮崎市立小学校の校長で定年を迎えました。退職後は旧清武町(現宮崎市)の歴史資料館長に迎えられました。学校管理職はさておき、他は波長の合う全くストレスを感じない職場で幸せを満喫しました。
 調査研究は『宮崎県史民俗編』や『日向市史』『日之影町史』『北浦町史』『清武町史』の執筆、民俗学会会誌『みやざき民俗』には毎年投稿、MRTポータルサイトのミテンには「みやざき風土記」と「宮崎、こぼれ話」の投稿依頼があり、前者は二百編、後者は百編を超え、これらは良い機会を与えていただいたと思っています。充実した人生を歩いたと満足しています。
 
 平成二十四年宮崎県は、本県の神楽をユネスコ世界文化遺産に登録申請する事業を起こし、神楽の実地調査や記録保存を計画的に実施し、映像は日本語と英語によるネット配信、実際の神楽披露は東京や大阪、福岡など都会で行っています。こういうことが功を奏したのか最近神楽見学、神楽撮影の県内外の観客が増え、神楽保存団体の皆さんもやる気を起こされている様子が見て取れます。
 他に「米良山の神楽」が国の無形民俗文化財記録選択となり、調査記録が始まっています。これらの事業に民俗学会の仲閒五人が関わっています。
 今、本県の民俗芸能に関する事象は神楽一色の感じです。宮崎県が誇る貴重な文化遺産である神楽を積極的に調査し、研究を深めようではありませんか。

平成31年3月

『みやざき民俗』第71号