第72号 編集後記

 誰もが想像だにしなかったコロナウイルスの拡大で、人々の生活が一変してしまった。人との接触が制限され、飲み会や人々の楽しみであったイベントや祭りなども縮小されるか中止となってしまった。当たり前とされた生活が過去のものとなり、いつ元に戻るのかさえも判然としない状況である。民俗調査では聞き取り調査を主に行うが、対面で対象者も高齢者であるため、なかなか調査もできない状況である。神楽などの民俗芸能などを現地で見ることもできずにいる。
 こうした状況の下、ある妖怪が注目されている。その妖怪とは、アマビエという妖怪である。水木しげるの鬼太郎にも登場する人魚の姿をした妖怪である。コロナが早く終結することを願って様々なグッズも作成されている。アマビエとは、弘化三(一八四六)年に肥後国の海中に出現し作柄や疫病の予言をした妖怪で、くちばし、鱗をもつ三本足の姿をしている(『47都道府県妖怪伝承百科』)。もともとはアマビコ(尼彦)という妖怪がもとになったともいわれる。これらの妖怪は予言獣とよばれる妖怪で、代表的な妖怪としてクダンがいる。社会情勢が不安定なときに現れ、江戸時代には、瓦版などで広く流布したり、噂として広がった。その姿を描いたものを貼ると災いから逃れられるというものであった。意外と知られていないが、実は宮崎にも同じような妖怪がいる。その妖怪とは、アマビコニュウドウ(尼彦入道)という妖怪で、日向国イリノ浜沖に体は鱗で覆われ、手は鳥の羽に似て顔は老人の顔し、何本もの足が生えている(『日本の幻獣ー未確認生物出現録ー」)。アマビエと比べるとかわいらしいという姿の妖怪ではないし人々に知られていない。いつコロナが終息するかわからない状況下では、これらの妖怪の力を借りてでも、早く終息してほしいと人々は願っているのである。なお、これらの妖怪が描かれた絵は、広島県の三次市にある湯本豪記念日本妖怪博物館三次もののけミュージアムで見ることができる。
 さて、会誌の発行が、二年に一回になってから二回目の発行である。今回は、八本の論考・資料紹介を掲載している。特に、神楽に関する論考では、県内の神楽の設えについて概観されたものや西米良村の小川神楽の記録がある。また、資料紹介として、高千穂神楽の関係者の墓を紹介されており、墓を神楽に関連する資料として扱うことの試みがなされている。その他に、新民謡や枕石など会員が日頃関心を寄せるさまざまなテーマの論考も掲載している。今回から新たな試みとして、会員諸氏の著作を紹介する書誌紹介を新たに行った。今回は、四名の著作を紹介している。会員がどのようなことに関心を持ち調査をしているのか情報共有の場となればと思う。今後もこの取り組みを続けていきたい。
 会誌は二年に一度の刊行となったが、この学会が今後も発展していくためにも、皆様の本誌への寄稿とご協力をお願いする次第である。
 終わりになりましたが、会誌の発行に御協力いただいた会員の皆様、また、鉱脈社社長川口敦己様を含め関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。
(編集委員会 小山 博)

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